大人雑談掲示板
- Re: 呟き ( No.149 )
- 日時: 2019/02/18 01:31
- 名前: ◆1hb3v.QvKY (ID: lU2b9h8R)
行為前、その1。
[]
もう、付き合って1年半。周りからは幸せそうだね、雰囲気がふわふわしてる、だの。
つまり、いつも平和そうだねと言われる。だけど、私は彼に一つの疑問を抱く。
それはお泊まりした時、旅行してホテルや旅館に泊まった時に何もしてこないこと。
私自身もそういう、性に関しては疎かったりあんまり興味がない。
自慰なんてものを全くしない、そんな訳はないが毎日する程にのめり込む訳でもない。
週に一回でもしてれば多い方かもしれない、と仲の良い友人に話したら少なすぎて引かれた。
その友人は一人で週に三回もしてるよ、と謎のカミングアウトをしてくれたその衝撃は今でも忘れられない。
そんなことはどうでも良いんだ。それより、彼は私をそういう目では見てないのだろうか。
魅力の無い女として。もしかしてお遊び、それとも都合の良い女なのかな。
でも、紳士で優しい彼がそんなことをするなんて考えられない。それが今までの私の結論だった。
それでも私は悪い女だ、念には念をと彼の周辺を伺ってみるもそれは全くの無駄となった。
そう、彼に女の気配さえなくて友人にさえよく私のことを話していると言うのだ。
確かに彼には女の気配はしないのだ。馬鹿男のように香水を纏わせることはないし、
彼の部屋に泊まった際には当たり前のように私の歯ブラシが口をすすぐ為のカップに入っていた。
冷蔵庫の中身も女らしいものなんて何一つ入ってなくて。女の髪の毛なんてある筈もなかった。
だとしたら、どうして彼は私とシタくないのだろうか。振り出しに戻ってしまった。
だから、思いきって聞いてみよう。明日、食事に行こう、と誘われたその日に考えた結論はそれだった。
彼は高級店をあまり好まない。高いから、が理由ではなく、格式高い店が苦手なのだという。
街にある割と普通な焼肉屋さんを提案したのは私だった。その店には個室があるから、を理由にせずにお肉が食べたかったから、と電話越しに聞いた彼は優しい声で、ただ、わかった。それじゃあ、ーー駅北口で待ってるから。と簡潔に話を終わらせることもなく、
私のどうでも良い愚痴さえ聞いてくれる。そんな彼が愚痴を溢したことなんて1回も聞いたことがなかった。
仕事帰り、少しばかりお洒落にした私服を見ながら北口で彼を待つ。
はぁ、と吐く息が常に白く、淡く、直ぐに消えてしまう。
初めてのクリスマスに彼から貰った黒を基調とした大人っぽいマフラーを感じながら、彼を待っていた。
ただ一人で寒い中、愛する人を待つのはとても寂しい。会えると分かっていてもだから辛い。
やはり彼は良い人でそういうことをしないのにはそれなりの理由があるのだろう、それは分かっている。
彼と一緒に居る度にそれは嫌という程に感じていたのだから。
私がダメなんだ、ということも常々感じて。私にはやっぱり魅力がないのかな。
唇を軽く噛むと心全体に黒い靄が掛かったように負の感情が溢れてしまう。しかし、
「ごめん、遅れちゃって……寒いよね、カイロでも使う?」
そんな考えを吹き飛ばすかのように私を認識すると早歩きで近付いてそんな優しい言葉を掛けてくれる。
彼がポケットから取り出した少ししわになっているカイロを取り出す彼の手を私は握る。
その行動の意外性に彼は驚いたらしい、何も言わずに私の顔をじっと見る。
口を少しだけ開けてぽかんとしている、可愛いかよ。
「カイロより手を握ってた方が暖かいでしょ」
「……うん、そうだね」
妙に納得したような表情をして、私が絡めた筈のその手がいつの間にか彼の手に包まれていた。
その日、焼き肉店までの歩いているだけの時間も幸せに思えた。
それから私はなんて愚か者なんだろう、彼にあんなことを聞こうとしてたなんて。
高揚する気持ちとは裏腹に黒い靄が私の一部を奪っていったような気がした。
店に入るなり、人工的な暖かさが私たちを襲う。不意にほどかれた手に残る温もりが逃げていかないように握りこぶしを作っても、無駄なこと。
そんなの分かっているのにその手は中々開かず、そして店員にいよいよ個室へ案内された。
焼き肉店で個室、とは珍しいだろう。私がわざわざ探しだした、たったそれだけを聞く為に。
高級店ではない、その上個室がある店を探すのには手こずったが見つかって良かった。
とはいえ、それも友人に聞いて見つけただけであるから、友人には感謝しなければならない。
個室に入ると他とは違う空気がするような気がした。まぁ焼き肉店らしいあの匂いは薄らいだ、からだろうか。
彼は子供のように少しだけ辺りを見渡してから、2脚の内、右の方の椅子を引くと
私の目を見つめる。どうやら、座って、とでも言いたいらしい。
その目に倣って私は彼の前の椅子に座り込むと、彼は紳士の如く椅子を前に押しやる。
それから彼は自らの椅子、私の向かいに座るとメニューを差差し出す。
たった一つだけのメニューしか置かないなんて、それを私に差し出すなんて。
本当に優しい彼が見れて嬉しくなる。それから、こんな彼を疑う私への嫌悪がまた生まれる。
二人で会話を育みながら、何を注文しようか考えていたが
結局はお互いの食べたいものを注文することになった。
彼は塩味のお肉をメインに、ライスやキムチも頼んでいた。
私もお肉の味付けは塩、他にはサラダやキムチ。二人して、あまり変わらないものを頼んでしまった。
暫くして注文の品が続々とテーブルに並べられていく。
会話をしている途中に店員が入ってくると会話をやめてしまう、それが私たちである。
それが何度か続いて、会話と共にお肉を焼く作業も平行して暫く。
注文した全てが届き、店員がこの空間に入ることはもう無くなった。
この二人だけの空間は誰にも遮られないのだ。
いつあの話を切り出そうか迷っていたが、中々言い出すことはできない。
言葉にすると恥ずかしい、それからそれを話して食事が美味しくなくなったらどうしようか。
折角の食事だ、せめて美味しく食べたいではないか。彼もそうだろう。
何の為に個室を選んだのか、私の不安が僅かに芽生えた勇気を摘み取ろうとしたが。
「いきなり食事に誘ったのに、お店をーーが決めてくれるなんてびっくりしたよ。
ここのお肉、とっても美味しいよ。本当、ありがとう」
「……あ、うん。喜んでくれて、嬉しい」
彼は人の露骨な変化に敏感であるが、微細な変化には中々気付かない。
つまり、総称すれば鈍感であるとも言えるのだが。
どうやら、今宵は違ったらしい。それか、私が分かりやすいか、だが。
「どうかしたの、ーー。わざわざ個室にしたのも何か俺に話したいことがあるから、なの?」
彼は私の目を捉えては離してくれない。つい、私も彼の目をじっと見てしまう。
「俺、馬鹿だからあんまりそういうのに気付けないから言ってもらわないと分からないよ」
言い方が凄く意地悪だ。そしてまだ目を離さない、目を逸らせない。
奥に仕舞い込んだそれが吐き出てしまいそうだ、彼にこんな目をされては困る。
今のままで充分、いや充分すぎる程に幸せなのだ。私は貪欲なのだ。
自分を卑下しないと吐きそうなそれを塞き止められない、喉が詰まる。
「ーーがそんな顔してるのは嫌なんだけど。ねぇ、俺に話せないの、それは」
彼は鈍感に見えて、凄く鋭いのかもしれない。
そしてやはり言葉が意地悪だ、私を締め付けて、それから話せ、と迫っている。
あぁ、もう吐いてしまえ。
「私って……女として魅力が無いの?」
吐き出した後、案の定後悔した。喉が震えたような気がした。
震えた息が彼に聞こえないように抑えると、肩が震えようとする。
お肉の焼ける音だけが今は二人の沈黙を濁している。
私の言葉を聞いた彼は何とも言えない表情で黙り込む。
十数秒の沈黙の後、彼はおもむろに口を開く。
「魅力がないと思ったら、別れてる。
ーーは俺が出会った女性の中で一番魅力がある、って断言するけど。
俺が何か、ーーにそう思わせる行動でもしてたってこと?
あ、浮気はしてないよ。スマホだって直ぐに見せられるけど、見る?」
彼の最後の問いには見ない、とだけ答える。
それから浮気なんてしてないと思ってる。もし、してたら私の方から別れを切り出してる。
なんて、更に返す。
「じゃあ、俺の何がーーを心配させた? 教えて」
この問いには中々答えられない。答えはつまり、それだから。
先程生まれた不安が再び私の口を閉ざそうとする。
今はむしろ、恥ずかしい、の方が強かったが。
私が頑なに口を開かないのを見て、彼はそれじゃあ、として
「俺の部屋、泊まって。そこでなら、まだ言えるんじゃない?」
果たして言えるのか、分からないまま、うん、と頷いてしまった。
それからは何もなかったように食事が進み、二人して彼の部屋に向かうことになった。
ーーの部屋は久し振りかも、最近は会ってはさようなら。しかしてなかったから。
彼の部屋の前に到着した時、彼は私を見て何も言わずに鍵を差し込んだ。