▼ ルネコの備忘録#5_ウーミン・ヴィンス編 ▼
最近は、何となく気分が沈みがちだ。
この屋敷について考えてみればみるほど、謎は深まるばかり。きっとそれは、俺の様な一介の人間風情が解明できる事ではないのだろう。天上に浮かぶ月を眺めながら物思いに耽っていると、何やら騒がしい声が廊下から聞こえてきた。
”やーだー、いま遊ぶのー!”駄々をこねる少女の様な声色に、もしかしたらこの屋敷で初めて俺以外の人間に会えるかも、なんて淡い期待を描いてそっと扉を開けてみた。その隙間から廊下の様子を伺った瞬間、俺の願望は打ち砕かれた。
人が持つ筈のない、くすんだ白い翼。それを大きく背面に広げた少女が、隣に立つ誰かの腕を引っ張っている光景が目に映る。”1時間寝たら遊んでくれるってゆったもん、ぜったいゆったー!”サラサラと流れる金髪をぶんぶん揺らしながら地団駄を踏む少女、あれは天使なのだろうか?にしては薄汚れているが。
一方隣の怪物はうんざりした様子で”…勘弁してよ”と嘆息していた。どういうトリックなのか、暗い灰色の花が彼の肩や手首にいくつか咲いた。
そこで、ふと俺の視線に勘付いた少女が目を輝かせながら俺を指差して”あそぼー!”と声を張り上げた。突然の出来事に戸惑い、対象が違うかもしれないが助けを求めるように花の彼を見つめると”……うん、君に任せた”まさかの丸投げかよ、と愕然とする暇もなく踵を返し立ち去ろうとする彼。
しかし少女がそれを許さず、彼の腕を今まで以上にがっちりと掴み”うー良いこと思いついた!あのね、3人であそぶの!”__こうして、予期せぬ形で怪物2体を部屋に招き入れる事となった。