大人雑談掲示板
- Re: アリスは憂鬱な夢をみる / 物語 ( No.1 )
- 日時: 2025/10/01 04:18
- 名前: 赤の女王 (ID: LU1dyaTr)
始めに
この国には不思議な掟がある。
次代の「赤の女王(あるいは王)」は、国中の誰でもなく──各国から偶然に選ばれた、たったひとりの人間によって担われるのだ。
けれど選ばれる者には、ひとつの共通点がある。
皆、幼き日に原因不明の火に呑まれ、家を失い、両親を失った孤児であること。
その哀しみと混乱のなかで、夢と現実の境がほどけ、迷子となった彼らは、やがて「不思議の国」へと送り込まれる。
かすかな記憶の底で、誰かが苦しげに「助けて」と囁いた。
見知らぬ幾つもの声は、異なる響きで、同じ言葉を告げる。
──「お前がアリスだ」と。
目を覚ました場所は、薔薇の香りに胸を満たされる庭園。
そこに咲き誇るのは、ただ一色。
血を思わせるほど濃く、艶やかな深紅の薔薇ばかり。
そこで出会った「人ならざる住人」は、たったひと言だけを与える。
──「アリス。君が、赤の女王候補だ」と。
けれど候補であることは、すぐに何かを課せられる意味ではない。
ただ、この国で暮らしを積み重ね、その姿を見定められる。
やがて相応しければ赤の女王となり、違えば、かつての世界へ帰るだろう。
その時、あなたはかつてよりも確かに強く、迷路のような病から解き放たれているはずだ。
……ただし。
もし「見初められてしまった」のなら。
そのときあなたは、もう帰れない。
生涯をこの国に捧げる「赤の王」となるか。
それとも、人ならざる彼らに縛られ、永遠を共にするのか。
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