大人雑談掲示板
- あなたの匂いに溺れて消える
- 日時: 2020/12/08 20:54
- 名前: 雛風 ◆iHzSirMTQE (ID: V9P9JhRA)
青い瞳が揺れる。まるで海が波打つように。明るい光が、その青の中で反射して。白が水泡のように浮かぶ。
「あなたと私は決して交わらない。そういうものだから」
長い白の髪を風に遊ばれながら、少女は言った。彼女は巨大な白い門の頂上に腰を下ろし、眼下を見つめている。風がイタズラを終えて髪が戻り、門と同化して溶けていく。
巨大な門は森の一点に聳え立ち、その様は周りと決して交わり溶けてはくれない。
「お前と付き合うためには、どうしたら良いんだ」
「付き合う……それは交際ということ? ふふっ、面白いことを聞くね……」
少女は瞳に温もりを宿して笑う。
――君にとって、私は道具でしかないのに。
少女は瞳の温もりを消して嗤う。
「君は私と契約できる貴重な人材だ。そんな人が、簡単に欲神に心を奪われてはいけないよ」
欲神(ホシガミ)――その名の通り、神のような存在。人の欲を喰って生きる神。
「お前、門から離れられないのか」
「そうだね……昼間なら、少しなら大丈夫だよ」
「じゃあ一緒に街見に行こう。いろんなもんがあるんだぞ」
少年は笑った。その笑みは少女の青い瞳に沈んで、暗く染まっていく。
「オヴリゲイド。あなたは本当に、愚かな人間ね」
「……愚かな人間の愚直な欲望が、お前の御馳走だろう?」
深い海に沈んだ彼は、中に溺れる少女の手を取る。
「馬鹿だけど、そんなとこが好きなんだよな」
「ん」
「契約成立(いただきます)」
溺れる少女は少年の口に食らい付き酸素(エサ)を奪う。
欲を喰う神と共にいたいと言う欲は少年の中で不滅のエサとして永久に彼女を生かし続ける。
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