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リド「……あ、りがとう、ござい、ました…」

相手のへらりとした笑みや、濡れ鴉色の綺麗な瞳に見つめられれば、何故だか胸が高鳴って言葉が上手い具合に出てこず、少し途切れ途切れになりながらもそう言えば視線を下げる。後半に続くはずだった「またのご来店をお待ちしております」も言ったのだろうが、口をモゴモゴとさせていたためテンマの耳には届かなかったかもしれない。 そんな事を頭の片隅で思いつつも視線をそっと上げれば、少し悩むように視線を右往左往させるも、こんなのは自分らしくないと思えばぺこりと頭を下げ。

「(明日また、来てくれると嬉しいですが)」

勿論そんなこと言えるわけがない。特別な関係でもない、ただの店員と客なのだから。だからこそその言葉は飲み込んで頭を下げるだけに留めれば、顔を上げた際に微かな笑みを浮かべて手を振り返す。こうやって食べ物が関係してない時に笑うのは久しいかもしれない。もちろん本人は意図してやっている訳ではなく無自覚なのだろうけれど、それでも珍しいことに変わりはないだろう。 振る手を止めて歩き出さない辺り、相手が動き出すまではそのままでいるつもりなのか、じっと相手の次の出方を伺っていて。