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杏子「ん、うん……」
自分もまた会えて嬉しいと言うように頷くも、髪に口付けられると、またくすぐったそうな反応を返す。相変わらずだなぁと思いながら、やはりあの頃とは違う感情が湧いてくる。彼は変わらなくとも自分は変わってしまったんだと少し複雑な思いがこみ上げるが、互いのことを考えると当然のことかもしれない。

「……ね、ねえ、歩きながら話さない？ 雑貨屋さん、連れて行ってくれるんでしょ」
しかし流石に、誰かが通るかも知れないこの場所でこんなやりとりをし続けるのはどうにも恥ずかしい。彼の手を取りながら「ね、」と急かすように提案する。


来璃「……ごめんね」
押し倒されたものの、それでも来璃の表情は変わらなかった。内心では自身の想像が正しいものであったことに喜びつつ安堵し、またどうして忘れていたんだろうという疑問と、彼に対する申し訳なさも感じていた。更に彼の態度が変わったことに驚きもしていたが、先程までの態度を思い返すと少しだけ、腹立たしくもなった。

「でも……春ちゃんも酷いよ。名前も呼んでくれないし、怒ってるみたいに怖い顔してるし……今だって乱暴だし。……こんな怖い人春ちゃんじゃないって思って、さっさと帰ろうかと思ってたのに」
からかうようにそんな話をすれば、近づいた距離を更に近づけるように、彼の首の後ろへと手を回して抱き寄せる。額を合わせながら真っ直ぐと彼の瞳を見つめると、やっぱり変わっていないんだなと感じる。