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坊や、と俺を呼ぶ声がした。確信も何にも無いのに、何故か自分を呼んでいる
気がした。背後からの心地の良いテノールの声に足が釣られ、つい振り向いた
見知らぬ声に恐怖はなかった、昔の記憶にぽつんと残された物がまた出てこよう
として心臓がバクバクと静かに音を立てる。視界に映ったのは、青と紫
宝石の様にキラキラと輝くそれに俺の目は釘付けだった。あぁ、なんて綺麗
なんだろうか。男に対して思う感情ではないと分かっている、だが心はそんな
ことを気にせずに男の容姿を褒め称える。次に見えたのは金、キラキラと太陽の
光を反射させる綺麗な髪は風にそよそよと揺れている。まるで一つの宝箱の様だ
いや、違う…もっと神聖な物で……。不意にあの気に食わない奴に言われた言葉を
思い出す。｢神｣そうだ、それが一番合っている。パズルのピースがピタリと嵌る
神にどう言葉を返せば良いのか、一瞬何を言われたのかを忘れてしまう。あぁ
そうだ、｢どうして此処に来たのか｣だ。どうにか言葉を考え喉から放つ

｢む、昔…此処に来た、覚えがあって。その、懐かしいって思って…それで…｣

あぁ、何と情けないのだろうか。だが無理もないだろう、何せ相手は神だ
前に立っているだけで怖くなってしまう。しどろもどろの言葉を神はどう取る
のだろうか、きちんと喋ろと怒るだろうか