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　私は桜姫。本名をお壱。
　静かで平和な都に生まれたのだが、突然現れた悪党どもに女郎として売られそうになってしまい、このように男装して江戸まで逃げてきたのだ。
　男装して上手く逃げ切れたとはいえ、私の名はかなり有名だ。本名を名乗っては正体がわかってしまう。そのため私は父から極秘で受け取った「櫻井千景」を名乗っている。

　江戸に着いたようだ。この町は初めて来たからかよくはわからないが。
　なるべく姿がわからないように番傘をさすが、私の体には小さすぎたのか、姿が見えてしまっていた。そもそも何故雨は降っていないのにさしているのかと思われるかもしれないが、私は日光が嫌いだ。だいたい外出するときは番傘をさして日光を避けている。
　ここでしばらく身を隠そう…そう思いながら歩いていたとき。

「っ！くせ者ッ…！」

　あいつらだ。
　あいつらは突然私の前に立ちはだかってきた。
　こいつらが私を女郎として吉原に売ろうとしたのだ。
　こんなところまで追ってくるとは…驚いてしまった。しかも何故私の今の名を…
　しかし時には冷静に対処する力も必要だ。そう思いながら私は番傘を閉じて刀を抜いた。