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【家の事情で遅くなってしまいました。申し訳ありません】


【リゼル/日並町　公園】


「……そうか?」


　散りゆく桜、暖かい色合いの絵を見てから、彼の方を向く。恩返しの方法が決まってよかったと心の中で呟きつつ、昔描いたこの絵を渡すのは俺の意に反する。どうせなら新しく描いて渡したい。この絵はよく見ると色が褪せてきているから。


「…………とは言え、この絵はかなり昔の絵だ。……色褪せた絵は渡せない……
題を決めても、自由でも良い。１日……半日……それだけあれば描けるから……」


ここまで言って、心の中の俺が何かを言った。虚ろだったのに、一瞬で変わったな、と。
変わった? 一体何が? 俺は変わってない。傷を縫い、覆い、隠して、ボロボロになった心も、光を失った瞳も、変わってない。ただ、恩返しがしたい。それだけだ。

しかし、何故だろうか。彼の一言を聞いた時、無数の傷の一つが消えた気がした。
人と、他人と、関わったからなのか? 今の俺には、分からない。