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目的の店は此処から近い方なのでそんなに時間は取らないだろう。それに行列や待ち時間が出来るほど人気の店でもなくすんなりと入れる方だし、人気店に劣らない実力は持っているだろう店だ。都合が良いのではとでも言われそうなほど条件の良さに流石自分が選んだ店だと自画自賛したくなる。多分彼女だって喜んでくれるだろう。相手に促されればじゃあ行こうか、などと言って案内しようとするが、何となく物足りない。そうだ、手を繋いでいない。今までの人たちとは男じゃない限り隣を歩くときに手を繋いできたから、この状態に違和感があったのだろう。
「......ん」
当たり前の様にパーの形をした手を相手に差し出すと、手を繋ぐように要求するような仕草をする。手を繋ぐのは当たり前と思っているのがはっきりと表れているが、自ら手を差し出すことは少ないのか少し恥ずかしそうで

＋

またもや考えになかった行動だ。「わっ」と上擦った声で小さく反応を示すが、なすがままに相手に抱き締められてしまった。屈んでいた為にちょっとバランスが崩れ、中々に変な体勢になってしまっているのが自分でも分かる。
「な、何なんだよ......」
密着した状態でボヤくように言いながら、なんとか抜け出せないだろうかと相手の腕の中でみじろぐが上手く抜け出せそうにない。相手から離れるには多少の時間を要しそうだと考えると、少しは大人しくなり