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>>164

　一が発した言葉に諏訪さんはきっと驚いたのだろうか、口を僅かに開けている。それと、頬を掻いている。何で、だろうか。
それから発されたのは、色んな貴女を描いてみたい、というものだった。
聞いている筈の声が戸惑いをまとって、気のせいかもしれないが、頬が赤いような……。

「一を、ただの一を、描くのですか？　描きたい、と思ってもらえることは、嬉しいです。こんな、ただの一を」

　質問だろうか、どちらかというと自己否定のようにも聞こえる。
此処に来る男の人たちは遊女を、遊男をよく褒める印象がある。お互いに良い関係になったら、直ぐにその先の関係になりたいから。
　諏訪さんは良い人、良いお兄さんのような人だ。きっと本心、嘘なんて何処にも無いのだと思う。
　昔から此処に居たから、そう感じるのか。素直な子供時代を此処で過ごしたから、そう思うのか。