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おもむろに立ち上がれば、「これが金だ」と言いながら取り出した封筒を然るべきところに置いた。

「......行くぞ、着いてこい」

スタスタと商品に近付き静かにそう言えば、この会場から去ろうと彼に背を向け出入口へと向かう。無事落札できたことを喜んでいる風でもなく、落ち着いた表情である。遠目からでは女のような雰囲気があったが間近で見ると陽気そうな感じだったな、等と一応は相手について考えていた。
駐車場に出て自身の愛車である車まで歩けば、彼は着いてきてるだろうかと後ろを振り返り

ー

自分を買ったのは優しそうな大柄の男だ。恐そうな人じゃなくて良かった、とひとまず安心する。事実上今は奴隷という立場になるらしいが、そんな低俗な肩書きなど早く捨ててしまいたい。そう思っていたから、彼のような人間はちょうど良い。

「あなた、お名前をお聞きしても？」

相手が此方に近付いてくるのに合わせ、カツカツと音を立てながら歩みを寄せる。腕を組めるほどまで距離を詰めれば、目を細め手を口元に寄せながら名を問い掛けて