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　>>136

「…………」

　次第に謎の感覚が収まっていき、完全に普段通りになった所で大きく息を吸い、深く溜め息をつく。

「……お前の気持ちが分かった気がした」

　自分が彼の耳を触った時、彼はくすぐったいと言った。人間はくすぐったいい時は笑ったりするが、彼があの時笑わなかったのは、今自分が感じた感覚を同じ物を感じていたからなのだろう。そう思えば自分の以前の行いを申し訳無く思ってしまう。

「お前が言ってたくすぐったい……っていう感覚なんだろうな」


　>>137

　普通の人間だったら、まず猫だった者が人間として此処にいる事から驚くだろう。しかしどうしてかそこまでの驚きは湧かず、不思議な事もあるんだなという程度に驚いて。
　彼の話を途中まで聞いた所で、写真を差し出した手とは逆の手で目元を押さえる。疲れたからとかじゃない。彼が受けた暴行の数々に、苛立ちを衝撃を覚えたからである。
　それは、それを行った奴は、人間なのだろうか?
　そう疑ってしまう程に。

　顔を上げると、彼は涙を流していた。涙を袖でそっと拭ってあげながら、静かに、呟くように言う。

「……君の事を疑ったりはしない。僕の写真を知っているのが何よりの証拠だ。実は、この写真はまだ誰にも見せた事が無いんだ。だから、この写真を知る君を信じる事が出来る。あとは……」

　何度目かの涙を拭ってあげた後、彼を優しく抱きしめる。壊れ物を扱うように、優しく。

「もう大丈夫だ。君は頑張った。最後まで願いを絶やさなかった。だから君と僕は再び巡り会えたんだ。もう君はそんな目に合わなくて良いんだ」