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最初の方は聞こえなかったのか特に気にも留めず相手をただ見つめる。撫でさせてくれたからお詫びはいい、なんて変な奴。そんなことを思いながらもお詫びしなくていいならラッキーだなと心の中で呟く。

「あ、そうだった。名前まだ言ってなかった…えっと私はあんず。どう書くかは分からないけど、飼い主さんからはそう呼ばれてたんだ」

ぼんやりとしか残っていない主人の記憶。随分昔のことだけれどとても温かくて優しい人だったのを覚えている。自分の名前を言いながら飼い主のことを思い出し顔を綻ばせる。相手の名前もやはり気になるのか「あんたの名前は？」と小首を傾げる。