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Re: 【文スト】中原中也と恋しませんか?【BL】 ( No.38 )
日時: 2019/10/26 13:25
名前: 唯人 (ID: iykFqmai)

白銀の美しい長い髪、赤と水色のオッドアイ、その右目を覆う眼帯、着崩した服装、背丈は俺と同じくらい。

それが、首領が探せと命令した『ヤツ』の容姿の情報だった。
きっかけは、下級構成員たちの間で流行った噂だった。
「見張りをしていたとき、変なヤツがずっと此方を見ていたんです」
「そうそう。なんか、年齢も性別もよくわかんねえような見た目してた」
「一応警戒はしていたんだけど、にこにこ笑って此方見るだけで何もしてこなくて油断してて…だけど、突然」
躰が動かなくなった、と。
その後、急に躰が動かなくなって動揺する彼らに近寄ってきて、ヤツは云ったそうだ。

「お兄さんたち、飴食べる?」

そして、提げていた鞄から棒つきキャンディーを取りだし、抵抗できない彼らの口に入れて、眼帯を下げて右目を覆うと「じゃあね」と去っていった。
実際、それから数分の間に飴をくわえ直立不動している彼らが発見された。俺も、その様子を見た。異様な光景だった。こんな異能、見たことも聞いたこともない。
「面白いねえ」
首領は、そう云った。
「調べさせてみたら、同じような例は各地であったよ。神出鬼没、年齢性別不詳の、人間をみつめるだけで躰の自由を奪うことのできる異能力者…もし、そのくわえさせられたという飴が毒物だったら、凄いことになっていると思わないかい?」
首領は、楽しそうに微笑んでいた。
「拘束…拷問、暗殺…ねえ中也くん、素敵だと思わないかい?」
その後命令が出された。
『ヤツを捕まえ、傘下に入れよ』

だからこうして、俺も貧民街を歩いているというわけだ。
まあ、こんなのでほいほい見つかるとは思わないが…
得体の知れない、何か。今まで会ったことのない、何か。ヤツは、そんなもののような気がした。屈強な男四人が飴をくわえて直立不動しているあの光景を見た瞬間から、俺の興味はヤツへ向いていた。わくわくする。ぞくぞくする。
けれど、首領の命令は、絶対だから。捕らえなければならない。
溜め息をついた、そのとき。
「ッ……!!」
視界の端に美しい白銀の長い髪がなびいた。咄嗟に、その腕を掴む。
「お、まえ、だよな!?」
眼帯をした右目、水色の瞳。それが、俺を捉えて、見上げた。