>>9「……すみません、ご迷惑をおかけします」家まで、と言うと、当然ながら男は少々困惑した。それはそうだろう。自分の時間を犠牲にしてまで、人助けをしたい人間なんて一握りだ。やがて家に着く。相変わらずよろけながら、肩を借りて鞄から鍵を取り出す。扉を開ける直前、ふ、と全身から力を抜いた。