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Re: 【BL】化け物の生贄になった話2【1対1、募集中】 ( No.290 )
日時: 2021/12/31 18:37
名前: あんず (ID: JbG8aaI6)

>>288

しっとりと瑞々しい指が腕に触れる。検査の為とは分かっているが、それでもドキドキしてしまうのが男というものだ。熱くなっていく体温が伝わらないかどうか不安に思っていたが、彼女の鋭い一言に赤みがかった頬も心拍数も冷めていく。脳裏に浮かぶのは、自分を嘲笑う村の人たち。
『お前、村の生贄に選ばれたんだってな』
『寂しくなるなぁ。もうお前を可愛がれないなんて、泣けてくるぜ』
『俺たちの事を忘れない様に、今日は今までよりもっと痛め付けてやるよ』
そう言って押し付けられた松明の火も、降り掛かる拳も、吐かれた唾も、何もかも慣れてしまえばどうってことはなかった。でも無感情のその奥にはビクビクと震えて泣き喚く自分もいて、それに気付かない様に蓋をしてきた。生贄として捧げられた今、もうあの人達と会うことはない。そうだと理解しているのに、分かっているのに、長年にかけて植え付けられた恐怖は未だにこの体を蝕んでいる。ぽちゃん、と冷や汗が床に落ちて、やっと問いかけに頷く。

憂斗「す、すごいです、ね…こんな短時間で、症状が、分かるなんて…」

ははっと乾いた笑みが部屋に響く。声が震えて、梅さんの目を見つめ返すことができない。にこりと何でもない様に目を細めてみるが、カタカタと震える体は誤魔化しようがなく、息が詰まる。この人は何もしない、何も知らない。何も害はないと分かっているのに、記憶に残るあの人達が邪魔をして恐怖心を煽ってくる。ぎり、と無意識に強く握る手は、伸びた爪が食い込んで皮膚を破り、血が滲んでいた。