大人なりきり掲示板
- Re: 【BL】化け物の生贄になった話2【1対1、募集中】 ( No.296 )
- 日時: 2021/12/31 20:49
- 名前: あんず (ID: JbG8aaI6)
>>294
梅さんの手が離れ、一抹の寂しさに顔を上げると、そこにはいつの間にか凪紗が立っていた。驚く間も無く抱き締められ、また頭を撫でられる。暖かな温もりが体を包み、今までの苦痛から解放された様な、そんな気がしてまた目が潤み出す。すんすんと鼻を鳴らしながら涙を流す姿は、まるで小さな子供の様で、置いてけぼりにしていた時間を取り戻していた。
憂斗「ぅ、凪、紗さ…ん………」
涙が彼の価値ある着物を濡らすことも、許可されていない行動だということも分かっていた。でも感情のダムが決壊した今、誰にも自分にも止められなくなってしまった。自分より少し背の低い彼の肩に顔を埋めて、首に擦り寄る。この人生の中で何よりも幸せな時間だった。心の傷が癒えていくのと同時に、溢れていた涙はだんだんと枯れていき、ただすっきりとした頭だけが余韻を残している。ぽうっと暖かさに浸り、体を預けていると、段々と意識がはっきりしてきて、今自分がどういうことをしているのかが明確になる。
「ッ、あ、ご、ごめんなさい!す、すぐに退きますね!」
ボッと顔が真っ赤になり、羞恥に狼狽えながらも勢いよく謝り、凪紗から離れる。あの温もりが恋しいと身体が寂しがっているが、それを無視して目を四方八方泳がせる。感情に任せて自分は何でことをしてしまったのだろう、まだ会ってから数時間も経っていない相手に。湯気がたっているのが見えそうなぐらい耳と顔を赤くさせながら、プルプル震える姿は正に小動物だったが、その目の縁からは涙の気配は失せ、今までずっと濁っていた黒色は光が差しているのが分かる。まだ完全にトラウマが消えた訳ではないが、幾分か負の感情が取り払われていた。
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