「はい、頑張りますね」彼を玄関まで見送り、扉を閉める。閉めた扉を背に、彼の残した口づけの感触に触れるよう頬に手を当てた。嘘をついて元彼に会うのは、気が重いものだ。それでも、今の平穏な暮らしを守る為には片付けなくてはならないだろう。鞄を手に、焦げ茶色のカーディガンを着る。黒のストッキングに、踵の低い黒のパンプスを履き、自室を後にした。この後ホテルの部屋前に着く予定です。