店主も断りづらい事は椿も充分理解していた。酒はまだ断っても問題ないだろうが、店の経営となれば話は別だ。諦めの気持ちで奉仕を続けていると、店主が思いもよらない言葉を口にした。「士郎様、申し訳ありません。小桜は先程食材の卸問屋に使いを出してしまいまして、使いの内容からも帰宅は遅くなるかと。遅れれば朝になるやもしれません」そう告げ、店主は障子越しに頭を下げていた。