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>>10 【　蒼　】#リン

嗚呼、目が覚めた？
（イヤホンを通して伝わる此方へ存在と所在を問う声に気が付けば、読んでいた本をぱたんと閉じ。彼女の視界からは丁度死角になっていたであろう部屋の隅、腰掛けていた簡素なパイプ椅子からゆっくりと立ち上がった。座面に革表紙の本を置き、代わりに床に転がしていたペンとバインダーを拾い上げ。人懐こさを感じさせる微笑さえ浮かべながら、気さくに手を振り声を掛ける。最も肝心の場所は薄暗い部屋の中であって、其れは不似合いな親しみと映るかもしれない。僅かに腰を曲げて対象の様子をまじまじと観察したなら、満足げにひとつ頷く。目を覚ましたてな彼女の様子に構うことなく三日月の形に象った唇は、其れでも真に笑っているようには見えないだろう。後ろで組んだ両腕とともに背筋を真っ直ぐに伸ばして。）
……予想以上の成果だね、被検体。私も待っていた甲斐があったよ。