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>>13 【　サキ　】＃ヴァロ

（音階すらも適当な鼻歌を奏でながら、目指す先は培養槽。何れ程の間、此の時を待ち侘びたか──逸る気持ちを抑えながらも、其の面持ちは興奮を隠しきれておらず。まるで長年の恋人との逢瀬に赴くような様子の片腕には、淡い青色が折り重なる小さなブーケが抱えられている。重苦しく埃っぽい空間には不似合いな笑みを浮かべながら、コツコツと革靴の踵を鳴らし彼の前へ。瞳に映るは培養液の中で揺蕩う被検体。其の美しいオッドアイな双眸を見詰めるよう、すいと片手を伸ばし指先は目元に触れるかの如く、隔てるガラス壁が無ければ頬へ触れるかの位置な空中で固定。此方を見据えているであろう、夜目が利くと情報共有した、此の暗がりでも視える筈の彼に深い青色の瞳を蕩けさせ。伸ばし宙に浮かせていた片手を其の儘ガラスに擦り合わせ、熱の籠る眼差しを向けながら。）
被検体ちゃん、待ってたよ。目覚めの気分はどうかな？