>>22 【 サキ 】#ヴァロ
知ってるよ、キミの名前…俺は。
(俺は、と云うか此処の職員は被検体の名を、のみならず把握済みなものだ。とは云っても、死んでいった今迄の者も含め被検体であった、あるに拘らず全員の名を憶えていられるのは驚異的な記憶力を誇ってはいないようだが保有しているヒスイか、辛うじて管理人であるくらい偉く賢いリンぐらいだろう。反対にヒスイと同期であるネルはどうも忘れっぽいらしい。忘れても実験結果等が保管されている書庫施設に行けば思い出せる。死んでいった者については実験の末に亡くなった者、逃亡を企てた者に対する制裁とし、幾人に昇るかは憶えていられないが俺だけに限らず自ずとか自らが手に掛けた事もある。こんな事何時迄続ければいいんだろう、とは心做しか心の奥底の何処かで密かに思っている節があり。組織の遣り方にいい加減良いようには思っていないようで。被検体にとって情報と成り得る事は思うだけで自ら進んで口にはしない様子。知りたいと思うのならば、尋くか探るかの必要性がありそうだ。彼を見ていると胸が軽い騒つきから、次第に騒ぐ。俺は彼、サキを何があってもどうあっても忘れてしまえそうにない。名前で呼ばれる方が良い、と云う旨を言い漏らし、ハッとしたように噤む其の様へ、即座に叶えてあげたいと思ったが、勿体ぶるように。ブーケを差し出せば一度はキョトンとした表情を浮かべられるも受け取って貰え「キミが願えば何時でも見せてあげられるよ」と言添えれば、薄らだが口元を緩め微笑んでいるのや、お礼を言われ嬉しくなりつつ、言い慣れておらず照れてしまっているのも、隠す仕草にもきゅん、と萌えてしまって。折角の綺麗な顔だ、顔を覗き込みたいと、彼の顎へ指先を添えるようにしながら。)
あぁ、隠さないでおくれよ。恥ずかしがらなくてもいいよ、折角の綺麗な顔が見えなくなってしまう、勿体ない。もっとじっくり、見せてごらん。俺は其の双眸に見惚れたんだ。