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>>24 【　サキ　】＃ヴァロ

ゴメンね、此方の事情でそう気安くは呼んであげられないんだ。
（何故知っているのかと云う疑問よりも、彼には寂しいと感じさせたらしい。寂しいと言われ、少し落ち込んだような声色で言わせてしまった事に罪悪感、胸が痛み。名前を呼んでしまったら、職員としてはあまり宜しくないとされる、いよいよ心の距離が縮まってしまう気がして。眉を下げ悪いね、と申し訳なさそうに。本当は被検体、なんかじゃなくてサキと云う素敵な名があるのに。本音なら気軽にそう呼んであげたい。呼んであげたならば、彼は一体どんな表情をするか、してくれるだろうか。彼には知らない想いを密かに馳せ。内通を知られれば、逃亡を企てられると、殺さなくてはいけなくなる。頼むからそんな哀しい事はしてくれるなよ。手離さなくてはならなくなる。手離したくない。そんな想いを抱えながら接していく。花なら実験施設Ａにて、実験をし育てる必要があるが、摘んでくるか其処へ案内し行けば良い。あんまり言わないで欲しいと、制止されれば冷静になり。其の素顔を見れたなら仄かな紅潮に染まった耳を目にしドク、と鼓動が脈立つ。両の眼で上目遣いに見詰められれば物凄い破壊力を感じられようか。顎に添えさせていた手を頬へ移動させ、包み込んで。速まる鼓動を落ち着かせつつ、其れからたっぷりと溜め、決心したように一度だけ名を呼んでみて。）
あぁ、分かった。………サキ。