>>44 凪様
さて、何処を案内しようかな。
(柔らかい笑みと共にそれは楽しみだねと返答をくれる彼に、ふんわりと微笑み掛ける。御花は生えてなくとも傍から見て、見た目麗しく美丈夫で見る者を魅了させる再度の綺麗なウインク、培った立ち振る舞いやストレートな態度に惹かれる人は多い。素直な気持ちを口に出したり仕草や態度で表現するのだ。だからと云ってやり過ぎず、丁度良いところで止められる。凄く意気軒昂な訳でも無く、かと云って消極的でも無い。他人の心地良い距離感を測りつつ自然に其れを詰めるのが上手いと云えよう。2度目の邂逅だが、出会ってから短期間で随分と心の距離が近くなった気がした。彼が再度手に取り、彼の返答を聞き留め、確と諾き。華奢な彼の手をやんわりと握って、再び歩き出し。まるで壊れ物に触れるかの如く握った手は、温かく寛容的に包み込む。街を案内すると約束したものの、そもそも街に慣れていないヒトには刺激的すぎる場所が多く立ち並んでいるもので。連れ回すつもりは無い、と言ったからには立ち寄れるのは一箇所くらいか。比較的ライトな場所を探すも、客層が影響して怖がらせてしまうかもなんて考える時間も楽しくて。手で繋がっている彼の歩調に合わせながら、鼻歌まじりにゆっくりと街を練り歩く。歩みを進めていると、矢張り周囲の注目を集め、注目の的になった。彼への好奇な目、有名人な梵に誰かが引き連れて貰える事に羨望の眼差しなど様々な視線が飛び交う中、そんな事も何処吹く風と一切気にせず歩いている様は、安心感に繋がり優越感にも似た心持ちで淡々と彼も足を動かせるだろう。気にしていないのでは無く、寧ろ其れらをも梵は楽しんでいるのかもしれないが。向かって辿り着いたのは、遊びよりも食を楽しむヒトが集まる、比較的に彼でも気軽に立ち寄れそうな軽食屋のようなところ。「ここのオーナーは見た目こそ厳ついけれど、3児を男手一つで育て上げた優しい心の持ち主だよ。食に関する拘りもこの街で一番と言っていい」厳つい顔の男へ馴染みな様子で軽い挨拶とともに近付いていけば、透かさず彼に紹介をする。「よく街のおねーさんたちに子守を押し付けられてて、断ればいいのにちゃんと面倒をみるんだよ。優しいよね」なんて男の肩にそっと手を添えて笑えば、相手の厳つい顔が少しだけ緩む。『お前があいつらにいい託児所があるって紹介しているんだろ』と呆れたように言われれば、「心外だな。君の腕を信頼しているだけだよ」なんて戯けて返す。近寄り難い強面の男性が僅かに見せた表情は説明と相違無く優しそうで、人は見掛けによらない事を体現しているかのようなオーナーと梵の遣り取りは、親しき仲である事と、其れは梵が中身も見ている事を又しても無自覚に証明していた。小気味良いテンポで会話が繰り広げられている中、ぽんぽんと慣れたように会話のキャッチボールを弾ませ、彼に面白い奴だろと話を振り。)