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＞ハイネ

「……あ、ハイネさん！？　良かった、えっと、ここは」
　あの屋敷の住人は誰しも癖があるが、一人でいるよりはまだましだ。名前を呼ばれ振り返ってみると知った顔があり、思わず安堵の言葉が漏れた。彼ならここがどこか、何があったのか知っているだろうか――期待に満ちた問いかけをする前に、ハイネは黒い手紙を拾い上げていた。
「それは、手紙ですか？　中には？」
　何かを呟いている様子を伺いながら近づいていく。内容をちらりとみて疑問符が脳を埋め尽くしている間に、ご丁寧に黒い砂時計が粛々と時を刻んでいく。
「ええっと……もしかして、あなたも巻き込まれたような状況、でしょうか」
　”化け物”と言われる彼らでも抗えない力というものがあるのだろうか。おずおずと自分よりも高い場所にあるハイネの顔を見上げながら問いかける。