>ウィリアム(>>133)
(ただ一縷の希望を提示するような内容には自身を励ましてくれたように感じて冷たい胸の内にまたほんのりと暖かさが去来し「 あなたの初めてが私だったのなら、 」そうであればレナードに遠慮することなく全てを手加減なく注げたのに、という口惜しさは無意識に肉声に乗ってしまった益体もないもしもの話。途中で気付いてゆるゆるとかぶりを振って「 いいえ。…私があなたにとってそういう存在なら良かったのだけれど 」それもまた片腹痛い夢物語と分かっていて軌道修正を。自身が貴方にとって最初に出会った怪物だったのであれば、幼馴染を差し置いて呼ばれる前に何度も部屋を訪問するかもしれない。だが今回は別ケース、きっと貴方の味を気に入っているであろう幼馴染との関係に変な歪みを与えない為にも線引はしておきたく「 あなたが部屋に招いてくれるのをとっても楽しみにしているの。だから、いつまでもお手紙をくれないと勝手に来てしまうかもしれないわ 」あくまでも約束の範囲内で貴方と触れ合いたいのだと、柔らかな微笑みを浮かべながら手放していたティーカップに手を伸ばして。「 まぁ、あの悪魔がヴァイオリンを?聴いた事ありませんわ 」レンブラント自身、誰かに披露したのはいつ以来の事だったか忘却の彼方であり、ウィリアムに紡いだ通り貴重な事だった。レンブラントとの逢瀬については特に相談事が出てこなかった事で何か重い鎖を巻き付けられたわけではないと推測して内心で胸を撫で下ろし、それ以上悪魔について言及するのは控えて。「 役に立ちそうな事教えてあげるわ。レナードにお願いを聞いてもらうためのもの…彼の好むものをね、 」彼が応じる未来が想像付かない事に加え、気難しい彼相手に望む対価を与えられる気がしないだろうから。然しそれは古い付き合いのある自身にとっても即答出来ないほど難解な問。元より好むものの少ない彼に懸命に思いを馳せて「 魔界の果物で何種類か彼の好むものはあるけれど、食べ物で釣られるような性格じゃないし…。後は…、……そう、彼は読書が好きね 」黒薔薇屋敷の果樹園に成っているそれをいくつか思い浮かべるも、高飛車なヴァンパイアは獲物に餌で釣られる事に良い気はしないだろう。折角獲物である貴方が怪物である自身を受け入れ部屋へと招き入れてくれたのだから何とか力になりたい、その一心で思い出したのは彼が窓辺でよく読書している姿「 …そうだわ! 」名案を閃いた、とばかりに小さく柏手を一つ打ち「 ウィリアムがオリジナルの物語を書き下ろして、それを彼にプレゼントするのはいかがかしら? 何章かに分けたら、続きが気になって彼の方からお部屋に来るようになるかもしれないわ 」些かハードルの高いアイデアだが、貴方が他の怪物に食べられてしまわない限りは命尽きるまで時間は山程あるはず。それが貴方のお屋敷で生きる僅かな励みになればと、お節介な意味合いは思い浮かべるに留めて「 まだ自分が読んだ事のない未知の物語――きっと彼は興味を惹かれると思うの 」淡く脇を締めながらゆるり両拳を握って力説するような仕草を取りつつどうかしら、と貴方を見つめて。)