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>マリーシュカ

「……分かりました」
　一度唇を噛み締め、細く息を吐き出した。それから少し目線を落とし、静かにマリーシュカの唇へ自分の唇を近づける。
　感触は柔らかく、冷たい。不思議だと思いながらも触れ合うだけのキスを数回、角度を変えて僅かなリップ音を立てる。
――これを１分……？
　場が持たない。恋人との簡単な触れ合いならこれでいいかとも思ったが、更に進んだものが必要だろうか。
　彼女の腰にそっと手を当て、僅かに間をあける。呼吸を整える間、熱をはらみ始めた目を向けた。
　言葉を向けることはない、ただじっと見つめて許しを乞う。これ以上踏み込む自分を彼女は許すだろうか、と。