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>マリーシュカ

　マリーシュカの言葉に驚き、困ったように眉を下げる。
「その言葉、そっくりそのままお返ししますよ」
　彼女は美しく、自分にも優しく接してくれる女性ではあるが、それは彼女自身が身に着けた教養の賜物でもある。気品と礼節から来る優しさに目がくらんでしまわないように、今回は命のかかったことでもあったことを忘れないように、ウィリアムは何度も自分を律しなければならない。
　それは罪なことだと思う。……マリーシュカに他意はないとしても。
　彼女の目線を追い、砂時計を見ればもう解散してもいいとでも言いたげに止まっており、壁には外に続く道。それらが急に理性に語り掛けてくるような気がして、ウィリアムは慌てて彼女から体を離す。
「お題もクリアしたことですし、早く戻りましょう」
　お互いの無事に安堵しつつも、先ほどまでの感覚が生々しく記憶に焼き付いて離れない。どこか固い笑みを向けて、彼女にここから出ようと提案を持ちかけた。