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Re: 【 指名制 / 3L 】耽溺のグランギニョル【 人外提供 】 ( No.173 )
日時: 2025/05/12 12:42
名前: ウィリアム・ロックウッド (ID: iv8UKAb0)

>>171

イベント
>レオニダス

 母は居ない。
 その言葉は納得ができるものであるし、この屋敷の住人のどれほどが家族という概念を持っているのだろうと疑問も浮かぶ。兄弟だとか同胞だという者もいるから少なくとも生まれ出でる元はあるのだろうか。それを人間のように親愛と共に過ごす幼少期はあったのだろうか。顔見知りの小さい子供の姿を思い出す浮かべようとしてはその虚像は儚く消えていく。
 そんな、今は無用だと思えるようなことを考えるのは、子役を任されたこと、穏やかに広げられた腕と優しげな獅子の目に見つめられたことにより、どこにも置きようもない気持ちが湧き出て、それを掻き消す努力をしようとしていたからだ。単純に言えば恥ずかしさを考えないようにしたかった。
 心の中で言い訳を並べる時間はおよそ5秒ほど。レオニダスからすれば名前を呼ばれて固まった青年が一人目の前にいるだけの時間だ。
――僕が後十……いや、二十若かったらきっと、よろこんで腕の中に飛び込んだだろうに。
 純粋で愛に飢えた子供の頃からは遠ざかってしまったことを改めて実感しながらも、時間制限があることも忘れられなかった。いよいよ近づいたのは死の恐怖とこんなことにレオニダスを巻き込むのは自分の死以上に責任を感じるからである。
「…………失礼します」
 おずおずと歩み寄り、たっぷりとした沈黙の後に小さく呟く。レオニダスに背を向けるようにして、彼の胸に背を預けるように座った。