>ウィリアム(>>254)
――――どうやって、
(ウィリアムの腕に牙の間隔で開いた二つの穴。目線を導けばそこには同属の捕食痕と思しき傷跡。流血は止まり少しずつ瘡蓋のようになりつつあるものの、血を糧とする生物に喰われた事実が夢では無い事を示す証である事は確かであろう。彼自身の意思で喰わせたんだろうか。血を要求する怪物となれば自ずと候補は絞られ、そこから今し方捕食を終えた自身と食事に対して妙な拘りを持つ昔馴染は必然と除かれ、辿り着いた対象は暗い檻の向こうから不気味な白濁した双眸を三日月に歪めて笑う姿。地下に幽閉されているため遭遇など出来ない筈、しかし途中まで口を突いた疑問は何もかも黒薔薇の悪戯と片付けられる愚問として霧散し。倒れた時の衝撃を覚悟していたであろうにも関わらず、感じさせたのは打撲による痛みでは無く離れた場所に居たはずの冷たい体温。「 ……誰でも彼でも旨い旨いって食べる奴でしょ 」彼が答え合わせた捕食者と自らの推測を一致され特別な温度は宿していない声でそう応え「 よく生きて帰してもらえたね 」無理矢理にでも背から下りようとしない挙動が指し示す何よりも貧血の真実。屋敷にいる吸血鬼との関わりが無ければ、もっと言えば探しに来ると出したはったりが通じなければあの場で命を落としていただろう事は想像に易い。感心というよりは無駄に危険を冒しあまつさえ自ら進んで血を飲ませたという行動の無鉄砲さに対する皮肉の方を色濃く宿した声を短く落とし。然程時間をかける事なく辿り着いたのは彼にあてられている部屋。見返りはレナードの事だから、きっとそれを求めての行動でない事は理解しているつもりだろう。背中の体温を地へと解放すれば代償に対するには沈黙を以って不要と示し。性別も今生きているのかも分からない、部屋の内装から察するに目を掛けられていただろう事は明らかで、きっとあの場で優先されるべきは彼では無かったはず。遠目から見ても分かる上等なシルクのベッドシーツに飾り付けられた室内、何よりも食にうるさいレナードが食事として選んだ事がそう考えられる理由で。きっとあの人間はレナードに情を抱いていたのだろう。命を落として直ぐに別の人間へと駆け寄られたら、想像の域を出ないたられば話だが良い気はしないか。当人は食後の気紛れで次の獲物候補をあるべき棚に戻したに過ぎない、そう自分の中では認識して踵を返し。)