大人なりきり掲示板
- Re: 【 指名制 / 3L 】耽溺のグランギニョル【 人外提供 】 ( No.38 )
- 日時: 2025/04/07 12:45
- 名前: ウィリアム・ロックウッド (ID: iv8UKAb0)
>>37
>レナード
レナード。当たり前だが聞き覚えのない名前だ。
しかし、尊大な態度やファミリーネームを名乗らないところから、この手の人物によくある『わざわざ名乗らなくても知っているだろう』という言外の圧、この辺りの金持ちか地主だろう。失礼のないことに越したことはない。
一人胸の内で納得し、これ以上追求すれば傾いたご機嫌がさらに傾いてしまうだろうと黙って頷いたウィリアムだが、その後レナードから語られた言葉は到底納得し得ないものであったし、自然に黙ることにもなった。
自分はいつの間にか、人間の世界ではない黒薔薇の屋敷にいて、元いた場所には帰ることができないまま、住人に食われて死ぬ定めが決まったのだと言う。
友人と蝋燭一本で語り合った幼い時のウィリアムでさえ、もう少しまともな話を考えていた。起承転結、登場人物が摩訶不思議な世界に巻き込まれるには理由と導入が必要である。こんな理不尽で救いのない物語などあるものだろうか。
目の前の紳士、レナードから淡々と告げられる不幸な設定に理解が追いつかないまま、ふと記憶の端に蘇ったのは、黒薔薇の封蝋であった。
――……なるほど。
あの招待状を開いた時、所謂伏線(フラグ)を踏んだのだと、小説家の性が悟る。
――事実は小説より奇なり、とは言うが、これはちょっとやりすぎな気がするな……。
気が遠くなったとき、レナードの語尾がわずかに跳ね上がった。それがこちらへ投げられた確認の言葉であることを理解し、困惑のまま口を開く。
「……ご忠告、ありがとうございます。納得……したわけではありませんが、理解しました」
どうやら彼の良心によってなされた説明を今は飲み込むしかない。顔に滲み出る絶望の色を押し隠そうと、無理やり口の端を歪める。笑顔と見えなくもない歪な表情。
「何はともあれ、助かりました……レナードさん。あなたがいなければ、私はいずれこの部屋を出て闇雲に歩き回っていたことでしょうから。友好と感謝の印に」
紳士同士のコミュニケーション、礼儀と親しみの形式的な方法として、ウィリアムは右手を差し出して握手を求めた。