>>リンデン姫( >>124)
(やっぱり、彼女は優しすぎる。突然趣味の悪い寓話のような実話を説かれ、その混沌の中心に据えられる駒として生み出されたなんて事実を知らされればもっと取り乱したっておかしくない、いやむしろそういう反応の方が多数派なはず。なのに彼女は本物の想いだと信じてくれる言葉だなんて。不意に息が詰まったのは、姫を憐れんだからではなく心から愛おしい、守りたいと思ったから。「 最初は…そう、国を救う鍵となる姫として接しているつもりでした。でも今は違う。貴女が【姫】でなくとも、私は貴女を想っていた 」きっぱりと断言する言葉には確かな男としての矜持を乗せて。ゲームに勝つことが目的で始まった出会いでも、今は――「 若し消させるだなんてそんな事はさせない! 」勢いよく立ち上がった拍子でテーブルが揺れ、カタカタと食器の揺れる音だけが小さく響いては消えていき。女性の前で声を荒げてしまうことなんて生まれて初めてかもしれない、咄嗟に出たとはいえ大人げない振る舞いを恥じるようにぐっと拳を握って、でも姫からは目を逸らさずに「 …私はこの花園に誓う。貴女の命をあの魔女に無為に摘ませたりはしない。 」どこか遠くで、極彩の魔女の高笑いの幻聴が聞こえた気がした。どうやってそんなことを成し遂げる?…分からない。でも、こんなにも熱く、真剣に、一人の女性を守りたいと思った事なんてなかった。テーブル一つ挟む距離がじれったい。本当はこんなもの荒々しく払いのけて今すぐ姫を強く抱き締めたい。でも今此処ではしなかった、今この場で、に今すぐには返事をしなかったも自分の胸元を握り締め)例え貴女が私を選ばなかったとしても。私は貴女に健やかに生きて、……世界で最も幸せな女性として、穏やかに暮らして欲しいのです…。でも貴女は選んでくれた!