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- Re: 愛しきプシュケの式日に、ルサンチマンは嘯いた_指名式、BNL ( No.127 )
- 日時: 2025/11/21 09:44
- 名前: ざざ (ID: QGuPLo0Y)
ジーク様の言葉は、嵐の只中で差し出された手のように
恐ろしくて、なのに触れた瞬間に泣きたくなるほど優しかった。
彼が「貴女が【姫】でなくとも」と断言した時、
胸のどこか深い場所で、ぱちん、と静かな音がした。
それは壊れる音ではなく、
ずっと閉ざしていた何かに光が差した音だった。
あんなふうに誰かが自分のために怒ってくれることが、
生まれてから一度でもあっただろうか。
(……いいえ。記憶の中にはない)
テーブル越しの距離が、もどかしそうに揺れる彼の拳が、
真っ直ぐに向けてくれる瞳が、
すべて、痛いほどに胸を満たしていく。
「わたくし……嬉しいのです」
勢いよく立ち上がったジーク様とは対照的に、
私はいつものようにゆっくりと、品よく立ち上がる。
ティーテーブルを避けながら彼の元へ歩み寄り、
胸元を強く握りしめている彼の手に、そっと上から添えた。
「こんなにもわたくしは愛されておりますのね」
宥めるように、落ち着けるように、柔らかな微笑みを向ける。
「消えるかどうか……まだ分かりませんわ。
そんな不確定な要素よりも、確定していることに目を向けてくださいませ」
ゆっくり深呼吸をして、さらに続ける。
「わたくしの愛したジーク様は、優しくて……どこか無邪気で、
それでいて聡明な判断のできる男性ですの」
“皇子”とは言わず、
ひとりの男性として見ていることを、そっと伝えるように。
「どうか……わたくしを愛してくださるのなら、
わたくしのわがままを聞き入れてくださいませ」
なんてずるい言い方なのだろう――
自分でも、胸の奥に小さな罪悪感が広がる。
愛を誓い合う口付けをしてしまえば、
本当に消えてしまうかもしれないのに。
それでも、愛してくれる人に、それを迫ってしまうなんて。
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