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Re: 愛しきプシュケの式日に、ルサンチマンは嘯いた_指名式、BNL ( No.129 )
日時: 2025/11/22 07:08
名前: ざざ (ID: eiOwwwRL)



 涙が零れたのは、彼の方だったはずなのに、
気づけば私の頬までじんわりと熱を帯び、
名前を呼ばれただけで胸がいっぱいになってしまう。

「ジーク様……」

強く、強く抱きしめられた瞬間、
世界がたったひとりの温もりだけで満たされて、
私もまた、抗いようもなく彼の腕の中に沈んでいった。

彼の胸に触れている場所から、
確かに脈が伝わる。
優しい鼓動。
生きている証を、愛してくれている証を、
こんなにも近くで感じてしまう。

やがて腕の中から離れ、ゆっくりと顔を上げれば、
彼が今まで見せたことのない柔らかな表情を
まっすぐに受け止めた。

「ふふ……失望なんて致しませんわ。
どんなことだって、この国のためにしてきたことでしょう?」

伸ばした指先で、頬に残る涙の跡をそっとなぞる。

小さく笑う彼に、
恥ずかしさを忍ばせた微笑みを返す。

「たくさんお話をいたしましょう。
わたくしも……もっとジーク…のことを知りたいのです」

もっと近くで支えたい。
沢山の愛と知識で彼を包みこみ、
隣に立つ覚悟ならもうできている。
どんな過去でも、どんな重荷でも
受け入れられる自信がある。

「そのタイムリミットが、一時間後かもしれませんし、
明日かもしれませんわね。
“きまぐれ”という、なんとも意地悪な制限があるから……
だからこそ、今すぐに、と思ったのです」

純白のドレスに憧れがないわけではない。
けれど、形式だけの、周りに知らせるための式ならば、
すべてが終わり、すべてが解決したその時に行えばよい。

愛を示すだけなら、
祝福の声も、豪奢な会場も要らない。

「愛を証明するのに……二人だけがいれば、十分でしょう?」

静かに微笑みながらそう告げた