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Re: 愛しきプシュケの式日に、ルサンチマンは嘯いた_指名式、BNL ( No.45 )
日時: 2025/11/11 17:42
名前: ざざ (ID: 4lMk69pY)



胸の奥に、そっと波紋が広がった。


「……ジーク様、それ以上のお言葉を頂いては、わたくし、どこへも足を向けられなくなってしまいますわ」

冗談めかすように微笑んでも、頬に熱が宿るのを止められない。

彼の声音には飾りのない真実がある。

それがどれほど優しいものであっても、あまりに真っ直ぐで、胸の奥がくすぐったくなる。


静かに息をつき、ふと瞼を閉じる。

思い出すのは、あの日…彼の腕の中で見上げた光景。

眩しくて、温かくて、恐れるほど尊い時間だった。


 (……わたくしは、あの時に見せてくださった貴方の優しさを忘れません。)




「……ジーク様」

 再び呼びかけた声は、夜の静けさに溶けるほど柔らかだった。

 言葉を探すように、ひとつ息を整えてから、そっと微笑む。


 「せっかくお会いできた幸運も、奇跡も……怪我のせいだけでは、少しだけ勿体なく感じてしまいますわ」


 瞳を伏せ、鉄格子の隙間からこぼれる月明かりを眺める。

 「こうしてお近付きになれたのは…この世界が、ほんの少しだけ優しかったから。
……そういうことに、いたしませんか?」


その声音には、冗談めいた軽やかさと、祈るような静けさが同居していた。

まるで、言葉そのものが小さな祝福となって、夜気に溶けてゆくように。


 ――どうか、ジーク様の世界が女神の幸運に包まれたものでありますように。