>>リンデン姫( >>67)
(甘く、何処か口角の上がる笑みが多かったが、自身の好みに耳を傾け検討してくださるただ其の瞬間だけで、演技掛かったものでない純粋で自然な、喜びに満ちた口端を綻ばせる笑みを浮かべてみせ。「 さっきの断った事に君は罪悪感を感じないで。まぁ、君がコレ!と思ったものを着ればいいよ。 」選択肢は多いに越した事はないが、彼女が思うがままのドレス着用を促し。「 君が着るからこのドレスに限らず此処のドレスは輝けるんだ。 」着こなせる自信はない、と言っていた言葉にも、片方のドレスを手近な台へと預け、空いた手で女王がいっとう気に入っていたピンクゴールドのドレスを指先で撫でる。ここは着てくれる主を失ったドレスの墓場なのだと、哀しげな声色と共に目を伏せたと思えば、次には喉の奥からくつくつと楽しそうに笑いを零してゆらりと視線を上げて「 ――ねえ、姫。君と兄さんはそっくりだね 」必要以上に自分の優先順位を下げ、相手を第一に考える事が癖のような二人。姿かたち等の表層的なものではなく、心の奥に育てた人格の部分に共通する糸と糸を縒り合わせるように、いつの間にか間隔を詰めては滑らかな顎先に触れ「 過ぎた謙遜は顰蹙を買う事もある。君には特に覚えておいて欲しいな 」吐息が絡まるほどの距離で囁き、離れ際に唇へ触れ「 僕は君の奥ゆかしい部分も好きだけどね。君にはこっちの方が似合うだろうから取り敢えずこれを着てみたらどうかな 」口説き文句は忘れずに添えた直後、ウインクと共にネイビーのドレスとショールをそっと手渡し流れるように細い腰を柔らかく抱いて、カーテンで仕切られた試着室へと誘導し「 さあ、どうぞ。手助けが必要ならいつでも言って。 」ネイビーのドレスがバックファスナーである事をさりげなく確認したうえで、彼女が遠慮なく助け舟を出せるようにと穏やかに付け足し。靴を選ぶのはドレスが決まってからで良いかと思案を巡らせながら、彼女が時を気にしなくて良いように「 時間はあるから、ごゆっくり。 」多少遅れたとしても、第一皇子は欠片も気を悪くしないだろう。しかし美しい姫をエスコートする自分を見た時の顔は拝んでみたくて仕方がない、いつもお行儀よくまとまった彼の独占欲に歪む表情をこの姫にも見せてやりたい。そんな悪戯好きをする雰囲気は100%隠せるものでもないらしく、どこか含みのある笑みを残して外側からカーテンを閉めよう)