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Re: 愛しきプシュケの式日に、ルサンチマンは嘯いた_指名式、BNL ( No.81 )
日時: 2025/11/16 06:57
名前: ざざ (ID: kK7tFRHj)



揺れるピンクを口元へ運んで一口含む。
想像よりも優しく甘くて

「……美味しい」

心からの一言をそっと溢し
アミューズを一口でいただけば、
口の中にひろがる食感と香りが楽しくて、頬が緩む。


そして、テリーヌとポワレが並べられると、白ワインのグラスがそっと置かれ、ジーク様の落ち着いた声が続いた。

「……えぇ、植物も甘い物もとても好きですわ。
季節によって花や葉は色も香りも変わりますもの。
それを眺めるのはとても癒されます。」

王宮の庭に咲く色とりどりの子達を思い出すと、
自然と表情に慈しむような柔らかさが宿った。


グラスの脚をそっと持ち上げ、

再び彼のグラスの高さに揃える

こちらもひと口含むと、ふわりとした香りがほどけていき、
酸味と甘みが重なり合い、
後から追いかけてくる微かな熱が繊細に体へ広がる。
まるで細い糸が体内の奥まで通っていくかのようだった。

「これがお酒…美味しくて、なんだか不思議な感じがしますわ」



テリーヌとポワレを終え、
白ワインの余韻に胸の内がほんのり温まっているところへ、

フカヒレスープが運ばれてくる。
テーブルに置かれた瞬間、立ち上る湯気が、まるで柔らかな布のように頬へ触れた。

その香りに誘われるようにスプーンを取り、琥珀色の液体をそっと静かにすくって口元へ運ぶ。



 ひとくち

「……」


言葉が、息と一緒にこぼれそうになった。



温かい。

舌の上だけでなく、喉を通り、胸の奥、
さらにその奥にあるはずの“冷たい場所”までも、
ゆっくり、ゆっくりと溶かしていくような温度だった。

思えば、誰かと向かい合い、同じ温かさや味を共有する
そんな時間を過ごしたことなど、これまで一度もなかったせいか

胸の内側を撫でられるようなその優しい温もりに、
頬がじんわりと熱を帯びていく。
気付けば、視界がほんの少し滲んだ。