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Re: 愛しきプシュケの式日に、ルサンチマンは嘯いた_指名式、BNL ( No.97 )
日時: 2025/11/17 10:51
名前: ざざ (ID: 1fp0/ElW)


 「昼食」という言葉に胸がひやりとした。

そうだ。もうそんな時間だ。
自分がどれほど今日の約束に浮かれていたか、
そういえばろくに食事のことなど気にも留めていなかった。

けれどジーク様は、いつも通りの上品さで
ゆるやかな所作も、胸元へ添えられた手もただ美しくて。

……それなのに。

白い手袋越しに示された濃い隈
それを見て、胸がぎゅっと掴まれた。

(…本当に、浮かれて休めなかっただけ…?)

私のために眠れなかった
その言葉は確かに嬉しい。
でも同時に、皇子としての激務の中で無理をしているのではと胸が痛んだ。

どんな顔をしていいのかわからないまま、
それでも差し出された腕へそっと手を添えた瞬間。

「あ…」

小さな声が零れた。
何かが奥から押し上がってきて、気付けば言葉になっていた。

「あの…わたくし、数字や他国の言語には強い自信がありますの」

軟禁の日々、友となったのは本だけだった。
その積み重ねは、たとえ記憶が偽りでも、知識は本物。

だからこそ。

「ですので…書類のお仕事など、させていただけませんか?」

 ジーク様の桃色の瞳を、真っ直ぐに見つめる。

「このままでは、わたくし……ただの穀潰しですわ。
そんな自分は……どうしても、許せませんの」

声は震えていない。
視線も逸らさない。

自分のためと言いつつ
役に立ちたい、という願い

ただそれだけを、真剣に伝えた。