大人オリジナル小説
- Re: 死んでは駄目ですか? ( No.3 )
- 日時: 2010/08/20 11:03
- 名前: 沙由
上 第二話 現実 私
「逶劉、起きて。もう夕方よ。話があるの」
耳に、そう言うどこか疲れたような母さん声が聞こえてくる。まぁ、疲れたようになるのは当たり前だろう。この人は、結婚ということに戸惑っているうちに子供を産んで、主人と仲が悪くなり、娘も事件を起こした。
まさに、最悪の人生だ。疲れたようにもなってしまうだろう。
「起きて!」
私が黙って考え事をしながら狸寝入りをしていると、母さんはヒステリックにそう叫んだ。
さすがにここまで怒らせる理由もないかと思い、私は起き上がる。
「おはよう」
「おはよう」
どこか気まずそうに挨拶をする。親子にしてはかなり固い。
「それで、なんのよう?」
私は冷たく言う。この人が私は嫌いだ。あまり話したくない。何故かは分からないけど、多分嫉妬なのかなと最近は思う。この人の生きざまへの嫉妬。
「実は……」
母さんは一回言うのをやめる。そして、少し考える。どこか不安げな心細そうな(いつかの私と同じような)目をしている。
だけど、やがて決意したように一回息を大きく吸い、母さんは言った。
「病院を出なければならないの。だから、学校にまた通わなければいけないの」
母さんはそう言った。
ガ ッ コ ウ ニ マ タ カ ヨ ウ ?
心の中に、過去の恐怖や不安、さみしさや心細さ、悲しさが。裏切り、悔しさ、怒りが、一気に押し寄せてくる。昔涙をのんだこと、友達の裏を知ったこと、彼氏の本心を知ったこと。すべてが胸を駆け抜ける。
「いやよ……。いや! 」
私はあの母さんのようにヒステリックに叫んだ。
「絶対に嫌だ。あんな場所に行きたくない! 私は……私は、死んでもあんなところに行かない! 学校になど行かない」
「だけど……」
母さんは悲しそうにどこか怖そうに、祈るように……そんな目で私を見て言う。そんな目で娘を見て言う。
「嫌! 」
私はそう叫び、母さんに枕を投げた。布団を投げた。近くに落ちていたスリッパを投げた。枕元に置かれた手紙を投げた。近くにあったものをとにかく投げた。
「嫌! 」
泣きながら投げる。自分の怒りや怖さとか……そういうものを隠すためにとにかく投げる。ただ必死に、ただ悲しく投げる。私は、看護士が駆けつけて鎮静剤を投与するまで物を投げ泣き叫び続けた。