大人オリジナル小説
- なおも響く。幕は閉まらない。 ( No.105 )
- 日時: 2010/06/04 22:50
- 名前: 黒紅葉 ◆uB8b1./DVc
砕けた。
パリン,なんて可愛い音じゃない。
ガッシャン,というべきか。食器十枚が一気に三メートルから落ちたような音。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い……」
呪文の様に唱える。野次馬の目も恐怖の対象でしかないから。
心が完全に砕けた。踏み砕かれて,破片すら残らないほどに。
破片は,細かすぎて拾い集める事すらも不可能な。
「あああああぁぁぁあああぁあああアあァあああアアアアぁぁぁァァ……」
目を背けたくなる。見てられない。耳をふさぐ。なおも空気の振動は鼓膜に届く。
悲痛な叫び声。誰の心にも届くはずなのに。
「あ…あはは……ハハッ! あァはははははははははは!!」
狂った笑い声が響く。悲痛な叫び声は,届かない。
「これで……これでやっとォ……! 私の復讐劇は終わったの…!! ふふ…あーはハハははははは!!」
手に持ったカッターを無造作に投げ出す。刃が出ていたままの状態で,野次馬の方向へ。途端叫び声があがる。当然。
狂気の笑い声と,悲痛の叫び声。つんざく音,空気の震えに押し潰されてしまいそう。
悪夢は,目覚めない。
+
復讐。
虐め何かで復讐しようとしたって,新たな怨みを生みだすだけだというのに,馬鹿な生き物だ。
PR