大人オリジナル小説

悲しい子。 ( No.113 )
日時: 2010/06/16 22:32
名前: 黒紅葉 ◆uB8b1./DVc

 ひらひらの黒いスカートに,レースが裾についた白い服。レースが二重になったハイソックスに,大き目リボン。
 誰がどう見たって,ぶりっこ。

 口調は普通。ただ甘い声だから,ちょっとうざい。
 顔は普通。でも可愛いと自分で思ってるおばかさん。

 ほら。
 虐められる事になる。


 長い髪を掴まれて,ハサミで切られようとしてる。
 泣き叫んで,汚い顔。

 私は見るだけ。加害者でも被害者でもない。ただの観客,傍観者。自分の立場を守るためだけの道化師を見てる観客気取り。遠く離れた上の席,影からこっそり見ているの。


「痛い…やめてっ!」
「あはは! そんな顔で,声で言われたって説得力ねーから!」
「あ,スカート切るってのはどう?」
「あー良いねそれ! やっちゃおやっちゃお!」


 あらま,ご自慢の髪に加えスカートまで。
 あの子私に「これお母さんに選んでもらったんだー」って嬉しそうに話してたのに。

 だけど生憎,あの子にそこまで感情移入する理由がないの。だから,かばわない。



「ひ……いやあああ!」
「あ,逃げた! 捕まえろ!」
「こらー待てー!」


 あーあうるさいうるさい,耳栓ないかしら。
 そんな事を思いながら,私は劇場を出た。

 空いた席は,空気みたいだった。


+


ブリッコ虐め。
一番無難な立場を選んだ賢い子。

女は怖いよ。