大人オリジナル小説

09「安定させないで不安定にさせる薬があったら良いのにね?」 ( No.12 )
日時: 2010/03/28 20:17
名前: 黒紅葉 ◆uB8b1./DVc
参照: それが偽りと言うならば,私の存在は無意味に等しいのならば――

09 精神迷子


 気持ちの悪くなりそうな市松模様の空間。全体的に茶色っぽくて,限りなく黒に近い不安定な空間。山積みになった【何か】は,近づく度に遠ざかる。
 距離感が掴めない。


 山積みになった【何か】を知るために,美早希は走って近づいた。そしたら酷くあっけなくそれが何かか分かった。
 小瓶に入った,薬。
 小瓶に書かれた文字は,【Drag】。

「…Drag……医学薬品じゃなくて麻薬とかね……」

 ふぅん,とでも言いたげに美早希は呟く。
 ドラッグは市販の薬ではなく,覚せい剤や麻薬など薬物乱用の対象になりがちな薬を示す。


「麻薬,か……もっと面白いものかなと思ったのに」


 精神安定剤とかさ。
 美早希はつまらなさそうに言った。



「もうこんな世界,無くなればいいのにねぇ。
 いっその事,私の存在を消す特別薬とかないかな?」


 笑い交じりの声,響く狂気じみた叫び。
 現れる何か。割れる小瓶。


「誰か首吊りロープ持ってきて!」


 大きな叫びだったのに,ちっとも響かなかった。
 目はうつろ,体もふらふら。希美は,まだ泣いてるの?


「そうだ……このまま寝てしまおう……市松模様の,狭い空間で」


 意識を手放すように呟き,涙をひと粒零して眠りについた。





「もう私,死にたい」
「あら,死にたがりピエロさんじゃない」
「はは,世話焼きカミサマは苦労しないのね?」
「そんなことないわよ? 十分苦労してます」


09/終


+


死にたがりにとって友達の存在は,すごく大きなもので,家を支える大黒柱的存在。
もしもその友達を失ったら,死にたがりは「人間不信者」へ変わる。
人間不信者は,いつしか自分をも呪う様になる……。


悲しい輪です。