大人オリジナル小説

良い子かわい子ぶりっこ構ってちゃんと面倒臭がり少女 ( No.152 )
日時: 2010/08/03 08:29
名前: 黒紅葉 ◆uB8b1./DVc

※暴力的表現あり!※


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 汚すな,と。
 振り払ったその手は確かに彼女の手。


 彼女はとっても構ってちゃんで,色々な方法を試した。犯罪にまで手を伸ばした。だけどもそのせいで敬遠された。「彼女には近付いてはならない」と。本当はそんなに危ない存在じゃないのに,誰も世間の言葉を信じて近付かない。
 可哀想とは思わない。そんな感情を抱くほどあたしは暇じゃないんだ。

 古い付き合いだから言える。「彼女はただの寂しがり屋」だと。
 だからこそ,可哀想とは思わない。人間皆弱い,寂しがりだ。かく言うあたしも,例外ではない。ただそれを,表に出さないだけ。内に秘めて,強がることもしてないだけ。

 話がずれた。彼女は可愛い顔立ちで,良い子に見せよう可愛く見せようとしている節があって。しかもその演技が無駄に上手で,教論からの信頼も厚くて。そのせいで妬まれたりする。それで,彼女を妬んでる輩に絡まれたりする。
 どうやら今日は少々厄介な奴らの様。


「お前,生意気」
「和美様に逆らったらどうなるか分かってたのよねえ?」
「良いわ貴方達,ここは私自身がやる」
「えーでも和美様ぁ…」


 このクラスは狂ってる。
 和美,という女が自分の事大好きな女共を仕切って強いつもりで楽しく楽しく生活していて,嫌なものは潰す。残骸を見て,楽しむ奴。
 「その思考回路が潰れれば良いのに」。あたしは思う。

 和美は野次馬を集め,教室の真ん中で彼女を潰すつもりらしい。馬鹿,恥晒しめ。彼女に逆らったらどうなるかわかってないのかな,和美は。


「生意気だから,その目その口二度と開かないようにしてやるわっ!」


 そして和美は,野次馬どもの叫びを聞きながら拳を振り上げた。
 だけど彼女はものともせず,その拳を振り払い,言った。


「このわたしをその手で汚すな」


 と。
 静まりかえる辺り,彼女は和美が放心した一瞬のスキを突いて,頬を叩いた。まだ手のひら。和美,今のうちに降参しといたほうが良いね。


「…ッ! あんたなんかに,負けてたまるもんですかあぁあっ!!」


 哀れな悲鳴に似た叫びを挙げて,和美は彼女に蹴りを入れるつもりで突進する。ほんの僅かな距離差だったのに馬鹿じゃないの。


「うるさい」


 彼女は圧倒的な迫力で呟いて和美の動きを止めた。なんで止まったのかあたしには理解したくない。
 そして彼女は和美を机の上に押し倒した。背骨が,机の角にぶつかるように。


「ッいった……!」


 そう言ったのも束の間の余裕で,彼女は容赦なく。


「うるさい目ざわり消えろわたしに逆らうな強がりが一人じゃ何にもできないくせに」


 真実を,本音を,ワンブレスで言う。
 誰かの机の上で,和美は恐怖に顔をゆがめ,泣き出しそうな声で言う。「ごめんなさい,もう何もしないから許して」と。今更過ぎる謝罪,無意味すぎて笑えてくる。

 彼女は鼻で笑って,和美の頬を殴った。腹を蹴った。足を踏んだ。殴って蹴って,骨を折った。挟みをどこからか出して腕を切った。何度も何度も血を流させた。和美が痛みに大声を挙げ自分に許しを乞う姿を楽しみながら,暴力をふるう。
 残酷,と思う。昔から彼女はああだ,誰よりも誰かを愛し誰よりも誰かを嫌う。


 和美が血を吐いて,泣きやんだところで,彼女はトドメをさそうとした。
 そろそろ入らないと。



「はいストップ,そこでトドメさしたら殺人犯になるよ」
「……今更すぎるでしょ」


 あたしは彼女の腕を掴んで,止めた。和美は気を失ったらしい。机の上からずり落ちた。野次馬の悲鳴。あたしは彼女をじっと見つめて何かを言いたげにする。というか伝えたがるフリ。伝えたいときは昔からこうしてきた。
 彼女はあたしを憎たらしそうに見つめ,溜息を一つ。和美を起こして背負って,野次馬共に「邪魔」と一言言って道を開けさせ,保健室へ向かった。


 あたしも「失礼」と言って,彼女等の後をついていった。濡れ衣を着る為。二人で,罪に濡れた衣を着て,一緒に叱られる。ついで,和美の行いも報告する。ああまた面倒な事になりそうだ,面倒臭い。


+


こんな人たちが居たって,不思議じゃない世の中生きるのは嫌だなあ,とつくづく思う。
私の学年は意地悪・暴力的が多い。
中学で他の小学校と合流する。ほんと怖い。