大人オリジナル小説

13「ねえなんで,なんでそんなところにいるの」 ( No.156 )
日時: 2010/08/24 10:15
名前: 黒紅葉 ◆uB8b1./DVc

13 いない


 リストカッターの掲示板,だからこそ,を話し合う掲示板。
 たくさんの人が集まり,たくさんの言葉が並ぶそれ。


 多くの言葉は,人の心を表しているようで,「自分は入っていいのだろうか,否,駄目なんじゃないか」と思わせる程だった。



 下へ下へ,文章を読み進める。
 膝裏の傷を,指先でなぞりながら。


 正直なところ,少し怖かった。
 どうしてここまでできるのか,理解不能だったのだ。



『包丁使って,腕の内側切った』
『教室で孤立して,いたたまれなくなって自殺するつもりでトイレで何回も切った。流れた血が可愛かった』
『↑死ぬなああああああ!!』
『気絶するくらい何回も何回も壁に頭打ち付けた,したら血出てきたから鬱陶しくなってまた頭打ち付けた』
『リストカットじゃないんだけど髪の毛抜いて発散してる』
『前アキレス腱の当たりきろうとしたら妹に見られて全力で止められたわ』
『↑そりゃそうだろ……手術室送りになるぞ? あ、俺はレグカしてる』



 レグカ。
 その言葉に,美早希は反応した。


 検索をかけ,意味を調べたところ,「レグカットの略,足を傷つける事」ということがわかった。
 ぴく,と反応する。


 なんだ,私は自傷行為をして,それはリストカットじゃなくてレグカットだったんだ。
 美早希は突然襲ってきた虚無感に笑いそうになった。


 
「あはは…私も希美も一緒一緒」


 傷を舐め合うと言う事。
 ていうか,むしろ一方的に舐めさせてた? 傷つけてた?
 そんな虚無感。何も考えたくなくなって,思考を放棄した。




「そうだ,希美に謝りに行こう」


 呟いた言葉は,何か…悪い事の予兆の様に消え行った。





「探し求めたものは」
「そこに在った?」
「ないでしょう」
「いないでしょう」



13/終