音は無かった。 敢えていうならば,そう,「線を引く音」。 ボールペンが紙の上を転がる様な,そんな感覚。 血のついた刃の先をティッシュで拭い,目尻に浮かんだストレスと悔しさからの涙を手の甲で拭い。 ぷくり,と血の浮かんだ箇所を指で拭って,絆創膏を貼って部屋に入った。 太股の内側,誰にも見られないところ。 そりゃ女じゃないし,短パンなんて履かないから。 絆創膏の上から赤い染みが見えて,少し笑ってから眠りについた。+えーと、レグカット。