大人オリジナル小説
- 11「私はいらない子なの死ねば良いわ死ねばそう一件落着よ」 ( No.38 )
- 日時: 2010/04/12 22:50
- 名前: 黒紅葉 ◆uB8b1./DVc
11 後悔
美早希は小物入れを抱きしめ,また眠りについた。今度は浅い,短い眠り。先程の眠りは深く長いものだったみたいで,時計の短針はリストカットをした時よりも四時間ほども進んでいた。
リストカットしたところに服が擦れて,痛い。ヒリヒリして,だけど妙に安心して,「私はもっと苦しまなきゃいけないの」という自分の声に惑わされて。
「手当しなくていっかあ……コットンもガーゼもあるけどさあ」
全てを投げ出した。
*
その頃,希美は一人部屋でリストカットの事をとても後悔し,自分を責め追いやっていた。心の隅っこに,逃げられないように,リストカットした自分を追いやって,怒鳴りつけて,責めて,泣かせて。
太股の内側の,紅い傷。それは痛切な叫び声の表れの様で,長さは十センチ,幅は三ミリの大きな傷。
何を血迷ったかは知らないけれど第一回目のリスカ大会。初戦は手加減した。その割に血は多くて,おかげさまでティッシュは真っ赤。
リスカ大会の後は反省会。何人もいる精神世界の自分を集め会を開く。
「…恐怖心を与えたくなかったの,自慢なんかじゃない,少しでも……安心していてほしかったの,怖くて泣かれたくなんかなかったの」
心の痛みに顔を歪ませ,泣きじゃくる心の隅に追いやられた【リスカしてしまった自分】。それを無表情で眺め,髪を掴み,壁に叩きつける冷酷非情な自分。
それを止めようとする,【いつもの自分らしき自分】。
「もう何が何だかわからないよぉ……っ!!」
反省会で起こる出来事,美早希のあの表情,言葉。
全てが大きな針となり,刀となり,心に突き刺さり深い傷を残す。
「私なんてっ,消えれば良いっ!」
希美は自分が作った傷の雨に耐えきれなくなったように叫んだ。
いつか美早希が,叫んでいたように。
希美はその時何も手にしていなかったので,自分の首を絞めた。絞めれば,死ねると思った。
このまま存在してた証拠をも消し去りたい。…叶うはずもない願いを抱いて。
後悔の念から解き放たれたいという,哀れな思いを込めて。
「あらあらお嬢さん,どうされたの?」
「私ね,もう死にたくなったの」
「まあ,自殺志願ってものですか?」
「多分,それ…楽に逝ける方法,教えて,お姉さん」
11/終