大人オリジナル小説
- 06 「鳴り響く笑い声,落ちる,紅の雫と澄んだ涙,綺麗な心」 ( No.6 )
- 日時: 2011/03/20 23:12
- 名前: 黒紅葉 ◆uB8b1./DVc
06 ネット
何であんな事言ってしまったんだろう。
美早希は今更ながらに思っていた。本当は今すぐにでも謝りたい。だけど負けた気になるのが嫌で。悔しくて。
希美はあの日を境に,離れていった。
同じ境遇に居て,初めて言葉を交わした時を思い出す。
「涙の水溜り作っちゃダメかなあぁ」
その声は,かき消された。
声が通らない教室が気まずくて,美早希は友達に早退すると伝え,希美が教室に戻ってくる前に帰った。廊下ですれ違った気がした時,きっと彼女は泣いてた。
*
家,洗面所で水で手を洗ってからランドセルを無造作に部屋に投げ捨て,小物入れを掴み,自らのパソコンの前に座る。
検索サイトをブックマークから開き,迷わず打ち込む文字。
「リストカット」
もっと知らなくちゃ。
彼女の事を,今の事を。
*
分かった事を直球にまとめると。
リストカットは自殺行為でありながら,リストカッターのほとんどが「生きるため」にリストカットをしているという事。リストカットは「切る」だけでなく,頭を壁に「打ち付ける」等も入るという事。
リストカットをしてる人を,叱ってはいけないという事。鬱病になりかけてる人がリストカッターに多い事。キチガイと自虐している人も多い事。
女性が,圧倒的に多い事。
美早希はそれなりに知識を持ってるつもりだった。ピエロだから,知識は持っておかないと生きのべない。基本中の基本である。だけど,ここまでとは思わなかった。美早希はこれを機に,「私の世界は狭いな」と苦笑しつつ思った。
「はは…私は本当は【道化師(ピエロ)】なんかじゃなくて,【自己陶酔者(ナルシスト)】だったのかもしれないなぁ……?」
静かに響く,音。
心が意味もなく痛み,ふと目につく小物入れ。いざという時,掴んで傍に置いた小物入れ。
何を血迷ったか,何も考えてなかったのかあるいは……。
美早希はゆっくりと小物入れから小さなカッターナイフを取り出し,袖をまくしあげ二の腕に刃を向ける。腕を切るのは初めてだった。今まで増やした傷は全部【精神的痛み】だから。膝裏のその傷は,自傷だがそれとは違う意味を持つから。
浅く,刃を肉に食い込ませ,小さく引抜く。痛みは,なかった。痛みなどなくて,むしろ罪人を処罰する時の様な快感しかなくて,あまりにも楽しくて,美早希は自我を失った。
痛みで気がついた時には,二の腕は傷だらけだった。
「べたべたするけど」
「きれいであざやかだね」
「うん,わるくない」
「じゃあ,きりつけるのをばつげーむにしよう」
06/終