大人オリジナル小説
- 07 「駄目,貴女達の待つ居場所に私もう戻れない」 ( No.7 )
- 日時: 2010/03/26 21:03
- 名前: 黒紅葉 ◆uB8b1./DVc
07 中毒
ピリ,という静電気が流れるような痛みで我に返った美早希は二の腕を見て声を失う。
「何よ…これ……」
傷だらけで,深い傷もあったのか,手首まで赤い雫が流れていた。ツゥ,となぞるように流れる其れは,酷くもどかしいもので。
血まみれになったカッターナイフ。汚れた手。切り傷が痛々しい腕。…興奮。
「あはっ…ははははっ」
私,生きてる。
…そう思った。
希美は生存確認の為に切ったそうで,安心したそうだが美早希は余計に不安になった。
私,生きちゃってるよ。死んでないよ。血,流れちゃってるよ。
それが無性に楽しくて,強い痛みとそれを遥かに上回る快感を求めて手首を切る。
ざく,という音。溢れだす血液,心。傷は深い。
戻り,また失いかけた理性を掴み,美早希はカッターを無造作にゴミ箱へ捨てた。
ズタズタになった刃,真っ赤に汚れところどころに黒くなった,雑誌の切り抜き用のカッターナイフ。
それが痛々しいほど,鮮やかに目に焼き付いて,悔しかった。
逃げられないのを,直感した。
「ズタズタ」
「バラバラ」
「痛いの? 気持ちいいの?」
「どっちも違う,カナシイの」
07/終
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