大人オリジナル小説
- 12「自殺が馬鹿だなんて,何を言ってるの?」 ( No.70 )
- 日時: 2011/05/23 22:44
- 名前: 黒紅葉 ◆uB8b1./DVc
12 「さよなら」
意識が遠のく。
スライドショーみたいに,思い出が脳裏をよぎる。
息は,できない。
喉に何かが詰まったように,息ができない。肺に空気が届かなくて,咳もでない。
手は,緩めない。
「…ッ」
声は当然のように出なく,僅かに残っていた空気を押し出した。
目は虚ろ。
ああ,眠い。最悪の眠りだわ,なんて思いながら,希美は意識を手放した。
手は,緩めない。
*
美早希はネットでリストカットしてる人の掲示板を探していた。
検索すればごまんと出てくるが,その中でも良い物を。
クリック。駄目。戻ってクリック。これも駄目。
カチカチカチカチうるさい。
中々見つからない,良い掲示板。
まるでくじだ,「当たり」が出る確率が異常なまでに低いくじ。できるだけこんなくじはしたくなかった,と美早希は思った。
「……あ」
一列に並ぶ,「リストカッターだからこそ」という大きな活字。
電流が走ったように体が反応した。これは,大当たりだ。
「や,っと……」
今更かもしれないけれど。
*
希美は部屋の中一人。
夢の中ただ独り。
「希」なんてそんな「美」しいものないわ。
「いっそのこと,永遠に眠ってしまおうか。
傷を癒しあう関係のはずなのに傷をつけあう関係なんて,壊した方が良い」
意識が無くなっていく中,希美は美早希に別れを告げた。
「あら! まだ眠る時刻ではないわよ?」
「そんなの嘘ね,体が眠りたいと告げた時が眠る時よ」
「それもそうね,でもあまり深い眠りは駄目よ」
「わかってるわ」
end
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